June 23, 2007

玄侑宗久の「アミターバ」を読み終わる。死というものに真っ向から向き合った小説である。末期癌の老婆の目を通して、死というものを驚くほどリアルに表現している。しかも、死後の世界まで。著者は現役の僧侶であるが、小説というかたちをもって、これほど死を直視したものを僕は他に知らない。しかも、小説として面白いのである。これはある意味、驚くべきことだ。僕は子供のころから「死」というものにとらわれ続けてきた。それは恐怖の象徴としていつもそこにあった。僕が死の恐怖からある程度抜け出せたのは、ごくごく最近である。いまだに死を怖いと思っている人、未知のものとして恐怖している人は、この本を読んでもいいのではないだろうか。死がここに書かれてある通りであるとは誰も言い切れないが、ひとつの指標とはなりうる。著者は臨死体験から量子論まで、あらゆる角度から死というものを見つめて書いている。ここにある死後の世界はひとつのモデルにしか過ぎない。しかし、死後に何かはありそうだ、というぼんやりとした確信めいたものを読者は得ることが出来る。言ってみれば、これは死を体験することの出来る小説である。

Posted by Sukeza at June 23, 2007 11:21 PM
Comments
Post a comment









Remember personal info?