February 06, 2007

僕がサマセット・モームの「月と六ペンス」を非常に高く評価していることは前にも書いた。そのサマセット・モームの選んだ、「世界の十大小説」に入っているということで、フローベールの「ボヴァリー夫人」を読んだ。僕が大学の仏文科を卒業したことは前にも書いたと思う。僕が卒論のテーマに選んだのはマルキ・ド・サドである。もとよりフランス文学に興味などなかった僕は、興味本位でテーマを選んだのである。結果は正解だったが。さて、もし僕がこの「ボヴァリー夫人」を卒論のテーマに選んでいたとしたら(まずそれはなかったと思うが)、さぞ苦労したことだろう。リアリズム文学云々という評価も、フランス文学史上の歴史という縦の軸を抜きにしては語れず、ただ一遍の作品として読むと、僕には特にリアリズムに優れた作品とは思えなかった。一人の女性が不倫を重ねて破滅していく物語、と一言で言ってしまえば簡単だが、やはり古臭さは否めない。訳が稚拙なのかもしれない。物語自体は面白く読めないこともないが、ありきたりの話と言ってしまえばそれまでである。僕はこの小説を批評するに値しない人間であるが、さて、もう一度読みたくなる小説かというと、そうでもない。つまり、僕にはこの小説に「新しさ」「新鮮さ」というものを発見できなかった。僕にとっては、前述のモームの「月と六ペンス」の方が遥かに素晴らしい作品に思える。

Posted by Sukeza at February 6, 2007 09:28 PM
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