July 03, 2006

そのとき、僕は彼女のマンションのソファで昼寝をしていた。目が覚めると、古館が中田英のメッセージを読み上げていた。画面の右隅には、「中田英寿 現役引退」と書いてあった。

ヒデのホームページはアクセスが集中しているせいか、いつまで経っても繋がらない。だから、僕は何故彼が引退を決意するに至ったか、いまだによく分かっていない。というか、理解できない。やりつくしたわけでもなく、ピークを迎えたわけでもない引退。29歳というあまりに若い引退。思えば、彼のピークは21〜22歳のころだった。背筋をピンと伸ばし、鳥のように左右に首を振りながら走るプレイスタイル。いつのころからか、そのプレイスタイルもあまり見られなくなってしまっていた。その代わりに、筋肉質の身体を身につけた。どこかで中田はもう終わっていたのだろうか。もう既に。いろんな記事を読むと、去年の12月に既に引退を決意していたという。だとすれば、彼はこのW杯でベストのプレイをできたのだろうか。彼にとっては始まりかもしれないが、僕らにとってやはりひとつの終わりだ。一時代の終わり。それにしても、この喪失感はなんだろう?

僕も一度、引退を決意したことがあった。僕も若かった。まだ30を過ぎたばかりのころだった。僕はオリコンの一番上に自分の名前を見て、やりつくしたと思った。だから、音楽業界から身を引こうと思った。それで、会社を辞めてゲーム業界に入った。しかし、結局は1年で元の鞘に収まってしまった。僕の場合は単なる思い付きに過ぎなかった。僕はそんなに重いものを背負っても、引きずってもいなかった。

引退後、というのは何か寂しい響きがする。余生とかいう言葉が頭をよぎる。ヒデ本人はそんなことは思ってもいないだろうが。たぶん、本人の胸は希望で一杯な筈だ。トーハトの役員をやっていることだし、他にもいろいろやりたいことがあるのだろう。しかし、僕はいろいろと余計なことを考えてしまうのだった。サッカー選手がプレイを辞めるというのはどういうことなのだろうか。引退とはなんなのだろうか。少なくとも、僕らは彼のプレイをもう見ることはできない。それはとても寂しいことなのだった。なんかひたすら寂しくて、ぽっかりと穴が開いたような気分になるのだった。

Posted by Sukeza at July 3, 2006 11:58 PM
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