January 10, 2006

Nが死んだ。脳梗塞ということだった。Nは僕よりも1つか2つ若い。年末に受けた会社の結果がそろそろ来るので、僕はパチンコ屋で連絡を待っていた。すると、連絡が来たのは合否の代わりに訃報だったというわけだ。帰るとファックスが届いていた。享年44歳と書いてあった。すると、Nは僕より2つ年下だったということになる。生意気な奴だったな、と僕は思う。Nは僕に最初に音楽業界の現場のイロハを教えてくれた人物だ。それと同時に、生まれて初めて僕を呼び捨てにした年下の人間でもあった。Nと僕は必ずしもソリがあってはいなかった。Nは小心であるが故に陰で大口を叩くタイプであり、ある意味、典型的な業界人だった。最後に会ったのは市ヶ谷の駅のホームで、それ以来10年以上会っていない。葬式に出るべきかどうかで悩み、I さんに電話をした。I さんはまだ訃報を聞いていなかった。相談の結果、弔電にすることにした。僕が、生意気な奴だったな、と言うと、I さんは笑って、お前に言われたくないよ、と言った。Nは順風満帆に業界を生きてきた。少なくとも傍から見ればそう見える人生だった。ただ、それがあまりにも短かっただけだ。Nはその小心さ故に細心な選択をして順調な人生を歩み、僕は小心な癖にヘンな大胆さを持ち合わせていたために道を踏み外してばかりいた。しかし、僕はまだ生きていて、Nはその短い人生を終えた。これはどういうことなのだろう? I さんとひとしきり近況を語り合った。僕は話しているうちに頭痛がしてきた。電話を終えて、生まれて初めての弔電を打ち、それからアドヴィルを飲んで1時間ばかり昼寝をした。ともあれ、僕は改めて気づいた。僕はまだ生きている。

Posted by Sukeza at January 10, 2006 09:24 PM | TrackBack
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