October 08, 2004

世界の中心で愛を叫んでみる

というわけで、「世界の中心で、愛を叫ぶ」を借りて読んだ。Amazonとかのユーザーコメントを読むと、ほとんどの読書家の人たちがボロクソに書いていたし、例の「Deep Love」の件もあったので期待していなかったが、それほど悪くない。というか、至極真っ当な小説である。抜群の出来でもないが、バッシングされるような出来でもない。というか、むしろ自分の書くものにどこか似ているんじゃないか、などとも思ってしまった。と思ってみると、この作者は僕と同い年である。読んできたものも、感覚的にも近いものがあるのだろう。大崎善生もそう言えば同い年で、近い感覚がある。ただ、書き出しのところでいきなり主人公が泣いているのにはちょっと引いた。センチメンタル過ぎるものは個人的には好きではない。その意味では、村上春樹の「ノルウェイの森」(これも同様に大ベストセラー)も僕にはセンチメンタル過ぎて、彼の作品の中では好きな作品ではない。いろいろと言われているある意味典型的なシチュエーションだが、これは意図的なものだと思う。僕自身も、わざと使い古された、オーソドックスなテーマで書いてみたことがある。それでどれだけ面白いものが書けるのか。こういう気持ちは書き手になってみないと分からないのかもしれない。とにかく、全体的には抑制された文体なだけに、ときおり顔を出す過剰なセンチメンタリズムが惜しい。いずれにしても、よく書けている小説だとは思う。じゃあ映画を見たいかというと、そうでもないが。タイトル(ハーラン・エリスンからの引用)に関しては、作者がつけたのではないという話もあり、あれこれ言うほどのことではないだろう。大ベストセラー=大傑作ではないことは自明のことである。ま、やたらと売れるとやっかみも多いということだ。

ところで、明日の夜から帰省する予定。

このサイトにはアップしていないが、僕が書いた中で一番愛着があるのが、幽霊に恋をするという、物凄くありふれた筋立てで書かれたものだ。タイトルも「幽霊譚」。今のところアップする予定はないので、読みたい人がいれば御一報を。

Posted by Sukeza at October 8, 2004 01:13 AM
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