September 16, 2004

村上春樹の新作、「アフターダーク」を読み終わる。リアルタイムで進行する群像劇。やっぱりPTA(ポール・トーマス・アンダーソン)の「マグノリア」に影響を受けたクチかなあ……。いつもの直喩をかなり控え目にした文体は変わったようでいて、やはり村上春樹的。むしろ、「わたしたち」という視点に徹する存在の方が新たな試みだろうか。新たな、と言ってもいわゆる「神の視点」のヴァリエーションである。この小説の場合は映画のカメラに非常に近い存在としての視点。いずれにしても非常に映画的な作り、構造。登場人物たちはとても村上春樹的である。相変わらず物語ではカタルシスをなかなか得られない。この感覚はなんかに似てるな、と思ったら、中途半端にアートを意識している若手映画監督(特に邦画)に見られるパターンだ。映画的であるように、構造はとてもエンターテインメント的であるにも関わらず、あくまでも文学に拘っていることが原因か。なんてことをつらつらと考えてみる。が、やっぱり読みやすいし、それなりに面白い。

Posted by Sukeza at September 16, 2004 12:09 AM
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