伝染

8時40分ごろ起床。で、起きてみると朝からなんかあったかい気がした。というぐらい、今日は午前中からぽかぽかした陽気。前にも書いたように、実家に戻ってから何故か寒がりになった僕は、今日もいつもと同じ格好をして業務に出かけたが、外に出ると暑いぐらい。

異変を感じたのは、既に昼前の段階から。なんだか知らないけどストレスが凄くて辛い。もうホントに全然休んでないワーカホリック状態が続いているので、精神的な蓄積疲労も相当だと思われるが、今日の場合はどちらかというと午前中から抑うつ状態のようだった。まあそれでなくても最近は何をやっても楽しくないし。それで昼ごろには早くも安定剤を1錠。それでなんとか午後までもたせたが、快晴とまではいかないけれど前述のような暖かい陽気、今日あたり最近ずっと鬱屈している母を気分転換に何処かに連れて行ってやりたい。それで、病院に電話して短い時間でも外出許可が取れるかどうか確認したところ、大丈夫だということで、業務は3時ごろに切り上げ、病院に迎えに行った。

夕食までの2時間弱の外出なので、近くの公園に連れて行った。着いてみると、ちょうど桜が満開だった。

先日から幾度か、他の人たちはバスで天童まで花見に行ったのに自分は行けなかったとこぼしていた母だが、確かに「きれいだね」とは言ったものの、にこりともせず、まったくの無表情だった。病院で何も出来ない、誰とも話せないと言っていた母だが、せっかく広々とした公園に連れてきたというのに、まったく気分が晴れた様子を見せない。それどころか、一昨日よりもさらに悲観的になり、調子が悪かった。公園のベンチに座って、僕がいくら励ましても、何を言ってもダメだった。今の母の悲観はあまりに強く、落ち込みようはあまりにも深い。

1時間ほど公園にいて、病院に戻る前に病院の目の前にある喫茶店に連れて行って、僕はカプチーノを、母は自分では決められず、僕がアイスオーレを頼んでやった。初めて入った店だったが、田舎町の小さな喫茶店のわりには思ったより落ち着いた造りで、店内にはジャズが流れていた。ここでも僕は、もう病気は治らないと言い張る母をなんとか説得しようと懸命に話しかけた。出来るだけ穏やかに、ありとあらゆる元気づける言葉をかけたつもりだ。だが、ダメだった。今の母はあまりにも固い殻の中に閉じ籠っているようだ。

時間が来て病院に戻り、病室の前で血圧をつける新しい用紙を持ってきたから来月もつけてね、というと、母は僕の手を握り、出来ない、と言った。僕がついこの間まで出来たんだから、今日出来なくても明日、明日出来なくても明後日、また書けるようになるよと言っても、母は出来ないの一点張り。僕は疲れていた。物凄く疲れていた。病室の前のベンチに母と一緒に腰掛け、僕は思わず両手で顔を覆ってしまった。僕は本当に参っていた。完膚なきまでに。

病院を後にして帰宅の途に就いたときには、僕自身が極度の抑うつ状態に陥っていた。もう頑張れない、と思った。夕食の食材を買いにスーパーに寄ってから帰ったが、もうふらふらだった。頭痛がして、手が痺れて力が入らない。もうホントに泣きそうだった。僕自身が完全に病人と化していた。帰宅して台所の椅子に座り、本当に泣いてしまいそうになった。僕は壊れかけていた。僕のアイデンティティは崩壊寸前だった。もうホントに頑張れないと思った。この状態では、何も出来ないと思った。どうみても、明らかに僕は病人なのだった。

安定剤を飲んで、食欲はまったくなかったけれど、必死になって夕飯を用意して食べた。それで少し、パニック寸前だった状態から落ち着いた。だがそれは、単に悲しい状態から憂鬱な気分に移行しただけのようだった。誰かにもう頑張れないと言いたくて、他に思いつかなくて仙台の弟に電話した。弟は電話を早く切りたがっているようだった。僕は電話したことを後悔した。ただ一言、大変だね、と言って欲しかっただけだったのだが、家族とはいえ、人に同情や優しい言葉を期待するなんて愚かな行為だったと思った。母の状態がよくならない限り、もう母のことで弟に電話するのは止めようと思った。今の僕と弟では、母の存在の仕方があまりにも違う。

また安定剤を飲んだ。それが功を奏したのか、その後はなんとかブログを書いたり出来るところまで回復。夜が更けてからHと電話。今日の煙草は17本。増えてしまったのは、自分を少しでも楽にする材料が他に見つからなかったから。今日ばかりは増えてもしょうがないと思った。

もう1時半だ。なんで今日もこんな時間になってしまったんだろう。僕は本当に疲れている。疲れ果てている。これから母とどう向き合っていけばいいんだろう。どうすればいいんだろう。自分自身のこの酷い状態から、どうやって抜け出せばいいんだろう。どう立ち直ればいいんだろう。母同様に壊れかけた自分を、どうやって修復すればいいんだろう。だが僕には分かっている。結局頑張るしかないんだ。他に選択肢などない。

さあ、洗濯した母の衣類を干して、煙草をもう1本吸ったら寝よう。

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