reversion

「リヴァージョン」

時折無性に岡山に行きたくなるのであった...

先週末、仙台に住む弟が久々に来て泊まっていった。前にどこかに書いたかも知れないが、彼は僕より10cmほど背が高いのだが、不思議なことに中学だか高校の頃に卓球をやっているうちに急に背が伸びたのだ。彼は大人しくて人見知りするタイプで(実は誰も信じないが僕だって似たようなものだ)、大学に入るころまでは女性とロクに話せないほどだった。いまでも照れながら自信無さげに笑うところは相変わらずだ。

高校生のときにテニス部の同級生が弟を見て、なんだ弟の方がかっこいいじゃんなどと云っていたのだが、と云うことはなんだオレもかっこいいと思われてたんじゃんなどと云うことはともかく、大雑把に分ければ僕はいい加減なタイプ、弟は真面目なタイプ。スポーツだけは僕がテニスで彼が卓球と違うものをやっていたのだが、他のことに関しては全て僕のやることを追っかけてきた。僕がギターを弾けばギターをやり、ビートルズを聴けばビートルズを聴き、ハードロックをやればハードロックを聴き、フュージョンをやればフュージョンを聴き、バンドをやれば...とまあ切りが無いが、そこんところが実は僕は可愛くてしょうがないのであった。

こんなところに僕のプライヴェートな家族のことまで暴露することもあるまいとは思うのだが、書いてしまったものは仕方無いので続けると、社会に出てからと云うもの、見た印象そのままに僕と弟は違う道を歩んだ。彼は堅実な業界に入り、入社して以来ずっとストレートに勤め続けて、ちょうどいい頃合に同僚と結婚して家族を持ち、いまでは二児の父親である。一方僕の方はと云うと、改めて云うまでも無い。

タマに同級生の結婚式などがあるたびに泊まっていくのだが、彼は昔とちっとも変わらずに僕に最近なんのCDを買ったのか訊いてくるし、いつも帰りがけには中古レコード屋に寄っては熱心に探して買い物をしている。それにつきあって見ていると、なんだか僕も目を皿のようにしてレコード屋で目当てのレコードを探していた頃が甦って来るのだった。

考えてみると、うちの両親は二人とも教師だったのだが、元々はうちの家系は祖父の代までは彫刻(正確には仏師)と絵描きの家系だったのだ。それが祖父が教師と兼業を始めて、父は教師だけになったと云う次第。弟はこの祖父から父に至る生真面目で堅実な流れを継承したのだろう。

一方の僕はと云うと...確か曽祖父の弟、つまり父の叔父にあたる人に一族ではもっとも名の売れた日本画家が居た。この人は生涯独身でふらふらした挙句岡山あたりで野垂れ死にしたのである。きっと僕みたいなのは一種の先祖返りなのだ。どうやら僕は保守的で無いものばかり、危なっかしいところばかり受け継いでしまったらしい。

駅まで一緒に歩きながら、前を歩く弟の頭にちょっと白い物が混じっているのを見て、僕はちょっぴりさみしくなった。

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