my favorite things vol.12

「オレンジ」

ロックが変わってしまったのか、それとも世界が変わってしまったのか...

ただいまゴールデンウィークの真っ只中。部屋を片付けたりしながら、久しぶりにアナログのレコードを引っ張り出してかけてみた。先日このコラムに書いたら、関西の方で若干1名に反響のあった(笑)ジェフ・ベックの「BLOW BY BLOW」、「JEFF BECK GROUP(通称オレンジ)」と続けて聴いた。やっぱり無茶苦茶かっこいいじゃん。このころのベック。フレージングといい、発想といい、ぶっ飛んでいる。こういうのをクールと言うんだよ、最近のやたらクールを連発する黒人フォロワーくん。オレンジは当時聴いたときに、R&B色の強いロックでしかも洗練されているのに衝撃を受けたアルバムだ。クレジットを見ると72年。もう27年も前だ。プロデュースがスティーヴ・クロッパーである。やっぱりカッコいいな。このころのジェフ・ベック・グループは、僕がジャミロクワイを話すときにいつも引き合いに出している。僕はジャミロクワイのやっていることは、このころのジェフ・ベック・グループのボーカルをスティーヴィー・ワンダーがやっているようなものだ、といつも言っている。僕にとってはそんな感じなの。このころのジェフ・ベックとかジミ・ヘンドリックスとかのギターを聴いているとロックとは何か、ロック・ミュージシャンの発想とは何かが伝わってくる。常人の到達できない世界、ま、要するに天才だね。

去年から今年にかけてインディーズのバンドに関わっていることもあって、いつもの年よりもライブハウスに足を運ぶ機会が多かった。僕はそもそもライブが苦手なのだが。何故かと言うと、スタッフとして関わるとこれほど面倒なものはないから。自分が出るのは好きなんだけど。で、ライブハウスにインディーズのバンドのライブを見に行くと、ついでに前後のバンドを見たりすることも多いのだが、僕らがバンドをやっていたころに比べると、格段に楽しそうである。僕らの時代よりは遥かにオリジナリティもあるしパワーもある。彼らに比べると、僕なんかが学生のころにやっていたのは単にすかして音楽をやっていただけだったかな、などとも思えてしまったりもする。実際、最近のインディーズのバンドを数多く見て来て、楽器の演奏能力は格段に巧くなっている。ただ、僕が気になるのは最近の日本のバンドの多くが洋楽を聴かずに日本のバンドしか聴いてこなかった連中がほとんどで、本来のロック・スピリッツというか、ロックというもの自体が多分にデフォルメされた邦楽になってしまっているということ。特にビジュアル系に関しては成り立ち自体が非常にドメスティックであるし、そもそも見てくれから入っているということもあるが、浪花節からの歌謡曲の流れの範疇から抜け出ないものがほとんどだ。だから、いくらテクニック的には上がってもロックを感じる瞬間というものがまだ足りない。バンドシーンという中での個々のバンドのオリジナリティというのは前述のように無くもないのだが、発想のオリジナリティという点ではまだまだである。ベックやジミヘンの何がすごいかと言うと、瞬間瞬間が常人の及ばない発想や閃きの積み重ねなのだ。つまり瞬間の集積のようなものなのである。

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