May 22, 2008

どこか静かなところに行きたい。

そんな風に思った。それで、何ヶ月ぶりかで夜の散歩に出かけた。遊歩道を歩いている途中で、虫の声がステレオサラウンドで聞こえるところがあったので、そこのベンチで休む。静寂というのは何も全くの無音という訳ではない。無音室が「静か」かというと、そういうわけでもないのだ。本当に静かな場所では、普段聞こえないいろんな音が聞こえる。やがて、虫が鳴きやんだので、僕はまた歩き始めた。公園まで辿り着き、お気に入りのベンチを目指した。まだ時間が早いせいか、トリムコースはひっきりなしにジョギングをする人が通る。ベンチに座り、沼の湖面に映し出された照明がゆらめくのをぼんやりと見つめながら煙草を吸う。ベンチに横たわり、風に揺らめく木の梢を眺めた。僕は一眠りしようと思った。しかし、目を閉じてもすぐ背中越しにジョギングする人たちの足音、話し声、息、そんなものが聞こえて、うるさくて眠れない。ときおり人通りが途絶えて、一瞬の静寂が訪れる。虫の声が聞こえ、魚が飛び跳ねる音が聞こえ、遠くを電車が走っている音が聞こえる。しかしそれもすぐにまた人々の騒音にかき消されてしまう。僕は眠るのを諦め、重い腰を上げて歩いた。ぶつぶつと独り言を呟きながら歩いた。頼むから俺をほっといてくれ、という具合に。

帰ってもやっぱり眠れなかった。部屋の中は静かだ。何も問題はない。しかし、眠れない。頭が過去や現在や未来を行ったり来たりする。しょうがないのでKに電話してみる。Kは昔と変わらぬ声をしていた。しかし、やっぱり過去に電話してもしょうがないのだ。それは最初から分かっていた。僕は既に、過去の遺物であり、異物であるのだ。今日の僕はうつだ。何も出来ないし、何をしたらいいのかも分からない。しかし、それは今日に始まったことではない。いつもと同じだ。しかし、そう思おうとしても何かが頭の中に小骨のように引っかかる。俺は昔からこうだったのか、それとも昔は違っていたのか。僕には何も分からない。誰かに救いを求めたいのだが、それが誰なのか分からない。結局、自分しかいないのだ、という気がしてしまう。僕はまるで置き去りにされた子供のように時間の中に佇む。

Posted by Sukeza at May 22, 2008 11:36 PM
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