November 10, 2006

夜、ピンポーンとドアチャイムが鳴った。ん? 誰だ? こんな時間に。僕は足を忍ばせてドアスコープを覗いた。やっぱり。案の定。ついに来た。現れました。NHKが。で、僕は何をしたかというと、もちろん、奥のリビングに引っ込んで息を殺していたのでした。しばらくしてもう一度ドアスコープを覗くと、どうやら諦めて帰った様子。ほっと一息。しかし、なんで僕がこんなにびくびくしなければならんのだ? 何故だ? わしはなんも悪いことやっとらんぞ。いや、やってるのかな……? とにかく、夜中に人を驚かせるのはやめて欲しい。しかも、人に罪悪感まで抱かせるとは、まったくなんという輩であろう。けしからん。自慢じゃないが、47年間生きてきて、NHKに受信料を払ったことはただの一度も……いや、あった。一度だけ。根負けして払ったことが。なんてこった。オレは、いや私は僕は、ちびりだ。屁垂だ。なんというか、根が正直なんだよね。嘘を吐くのが下手というか、吐けないのだった。テレビがない、と一言言えばいいものを、思わず口ごもってしまうのだった。どうしてもその一言が言えない。だってあるんだもの、実際。あるものをないというにはどうしたらよいのだ? うーん、分からん。いや、分かってるよ、分かってます。十分。毅然とした態度で、うちにはテレビがない、と言い張ればよいのだ。そもそも、というか、実際、このところテレビはまったくつけていない。だからないも同然なのだ。同然ということはないと言っても過言ではない。正確に言えばイコールではないが、イコールに近い。近いはず。だから、堂々と胸を張って言えばいいのだ。うちにはテレビないんですよー。へへへ。うーん、へへへは余計かもしれないな……。うちにはテレビないんどす。これでよし。今度また現れたら……さっさとリビングに逃げ込もう。

Posted by Sukeza at November 10, 2006 10:26 PM
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