master of the masturbation

「オナニーの達人」

...

どうでもいいけど副題長いな。ま、語呂がよかったので。

最近とみに記憶が覚束なくなっている僕だが、待てよ、最近、最近ともう数年前から云っているような気もするがまあいいだろ、肝心なことは忘れてしまう癖にときどきホントにどうでもいいようなことを思い出したりもする。どれくらいどうでもいいかと云うと、まず一生思い出さなくてもいいぐらいどうでもいいことである。

きっかけは何かと云うとカップめんだ。だいたいカップめんが主役を務めた時代はもう人一人成人してしまうぐらい前であって、そもそも最近ではカップラーメンと云う方が主流で「カップめん」と云うのはむしろ亜流であろう。などと云うことすら既にかなりどうでもいいことである。

そんなわけでネット上を例によってふらふらしているうちに、「カップめん」と云う言葉に遭遇したわけだ。それを目にした途端、こともあろうに僕は「オナニーの達人」のことを思い出してしまったのである。

だいたい自分がオナニーを覚えたのはいつごろだったろうか。えーとあれは家をまだ改築する前で僕の部屋が家の真ん中のまだドアじゃなくてふすまで仕切られていた頃だから恐らく中学生の頃だったろう。谷村新司が深夜放送で必死で輸入エロ本のぼかしを取る方法を考えていた頃で、その傍らではばんばひろふみが今にも死にそうな息遣いで四六時中笑っていた頃だ。実を云うとその覚えたてのころに一度祖母にオナニーの最中を見られたことがある。不幸中の幸いと云うか、たまたまうつぶせになっていたので、いきなりふすまが開いておばあちゃんが顔を覗かせたときに、見ていたエロ本に咄嗟に覆い被さったのでハタから見るとまるでカエルのように畳に這いつくばったまま、何?とかごまかした覚えがある。はっ。もしかしてこんなことはこういう半分パブリックな場所でわざわざ他人に知らせる類の話ではないんでないの?

ということはともかく、ついでに思い出すと、学生時代に大家に郵便受け越しに後背位を覗かれたことがあるのだが、いまだに昔ながらの四畳半とか六畳一間みたいなところに住んでる人は、くれぐれも玄関と部屋との間の戸を閉めておくことを薦める。

えーと、なんだっけ。そうか、カップめんである。

その昔、僕がまだ毎日スタジオに篭っていたころによく出入りしていた若い奴がいた。もう少々詳しく書いてもいいのだが一応彼にも人権やプライバシーと云うものがあるので、ここは彼がコーディネイターでその後ヤメて宅急便で働いているらしいという程度に留めておこう。当時20台前半の彼と、突然スタジオのロビーでオナニーの話になった。 何のオナニーが一番気持ちいいか、と云う話になった。勘違いされては困るが、所詮レコーディングスタジオと云うのはそんなところなのである。

その話になった途端に例の彼が突然目を輝かせて話し始めた。心なしか興奮のあまり語調も早くなっている。まず飛び出したのはバイブレーターだ。例の二股になってういーんとか云うやつじゃなくて肩凝り用のデカくて強力な奴である。そう云えば最近見かけないな。あ、あれでやったことありますか、す、すっごく気持ちいいんですよ。ちなみに彼は特にどもると云うわけではない。当然僕らは唖然として目が点である。おまえ、あんなの使って痛くないの?そ、それがいいんですよ、先っちょにね、先っちょにイクときに当てるんですよ、先っちょに、これが気持ちいいんだなあ。僕は何もそんな夢見るような目つきをせんでもいいだろうが、と思いながら聞いていた。で、ここから主役のカップめんの登場である。

それがですね、僕がいろいろ研究した結果、いちばん気持ちいいのはカップめんなんですよ、カップめん、あれがサイコーですね。研究した結果、と云う言葉は彼のそれまでの人生をなかなか雄弁に語ってくれる。ここに至って僕らはむしろ尊敬の目をもって彼をオナニー研究家、もしくはオナニーの達人として改めて見直すことと相成った。熱弁は続く。あ、あれをですね、ふたの真ん中だけにちょっと穴を開けるわけですよ、難しいんだなこれが、大き過ぎちゃいけない、それでそこから普通にお湯を入れるわけなんですが、そこからが難しい、要するに茹で方が固過ぎてもいけないし柔らか過ぎてもいけない、それで穴からお湯を捨ててから、そこからちょうどいい人肌の温度まで冷ますわけです、これがまた難しい、それでその、例の穴から入れると温度といい、絡み付き方といい、最高なんですよこれが、サイコー。目をらんらんと輝かせて口角泡を飛ばしながらそこまで一気に語り終えるのを見て、なんかスパゲッティのアルデンテをちょっと思い出しながら、僕らは「アホか」と云う最大級の賛辞を彼に送ったのだった。

どなたか試されたら報告してください。

written at 20th, mar, 2001

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