jump

「ジャンプ」

KIに捧ぐ...

あの日から、君は年を取らなくなった。
一方の僕はといえば
どんどんと年を重ねていくばかりだ。
ずるいな、これは。

君は若さを封印した。
ジャンプすることによって。
でも、そんなのアリかい?
僕にはジャンプできない。
そんな勇気は僕にはない。
僕は今5階建てのマンションに住んでいる。
ときおり、4階を見上げてみる。
ああ、あそこから君はジャンプしたんだな、と思う。
幸か不幸か、僕は1階に住んでいる。もし、ジャンプできたとしても
そっち側には行けないな。
もとより僕は高所恐怖症だ。

僕は、ベランダの手すりの角を
「世界の果て」と名づけた。
暖かい季節の夕方などに
僕は「世界の果て」で夕涼みをする。
そして、君のことをちょっと考えてみたりする。

君にとって
ベランダの手すりは本当に「世界の果て」だった。
そして君は本当にそれを乗り越えてしまった。
そんなものがありふれたマンションにあるなんて
それまで僕は思ってもみなかったよ。
やっぱりずるいな、君は。

もう少し暖かくなったら
僕は「世界の果て」に腰掛けて
君のことを考えてみよう。
僕らはキスもしなかったけれど
裏通りの暗がりで君を抱きすくめたときの感触は
今でも覚えている。
ああ、先に言っておいてくれれば
僕はもう少し勇気が持てたかもしれないのに。
やっぱりずるいな、君は。

もう少ししたら
もう少ししたら、暖かくなるよ。
そっちはどうですか?

written on 16th, mar, 2007

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