horse is horse vol.3

「鬼脚」

そろそろまた競馬始めようかな。

強い馬が好きだ。それもぶっちぎって勝っちゃうような。

ヒーローを求めるのは何も女性ばかりではなくて、むしろ男の方が見果てぬ夢を見せてくれるものとしてよりヒーローを求めるような気がする。そんなこともあって、他を寄せ付けないような強い勝ち方をする馬を見ると、まさに胸のすくような気がするものだ。たとえ自分の馬券が外れても、くやしさよりもいいものを見せてもらったという清々しさの方が先に立つ。何も一時期のオグリキャップのように連戦連勝でなくても、下級条件のレースでもぶっちぎって勝つようなレースをする馬が僕は好きなのだ。

そういうレースはどちらかというと芝よりもダートのレースに多い。タイムのレイティングをしているとよくわかるのだが、ダートの方が条件ごとの格差がつきやすいし、力差がはっきりつきやすい傾向にある。これはものすごく大雑把に分けると、芝の競馬はヨーロッパスタイルになりやすく(小回りや短距離はアメリカンスタイルだが)、ダート競馬はアメリカンスタイルのスピード勝負になりやすいから。だいたいダートのレースは長距離が少ないので、スピード勝負、もしくは力の勝負になりやすい。超スローペースのダートのレースは滅多にないもの。

僕が好きなのは、逃げてちぎる馬よりも差してちぎってしまう馬。より力の違いを歴然と見せ付けている感じに見えるもんね。そういう意味では四冠をとったときの四歳時のナリタブライアンは本当に強かった。あと最近ではダートでのホクトベガの勝ち方も同じだ。川崎のレース(エンプレス杯)での強さはびっくりだった。ちょっと前になるけど、カミノクレッセという馬がいて、この馬が初めて地方のダートのレースに使われたとき、旭川のブリーダーズゴールドカップだったと思うが、直線だけで大差(2秒以上)にちぎってしまったのには本当に度肝を抜かれた。それとこれは日本の馬じゃないけど、確か去年の凱旋門賞のパントルセレブルの勝ち方も、差してちぎってしまうという、ここ数年の凱旋門賞の中では際立って強い勝ち方だった。

「鬼脚」という言葉があるが、ちぎらなくても強さが際立っている馬というのはカタルシスを与えてくれる。これもちょっと前になるが、あの逃げて強かったミホノブルボンのデビュー戦は、出遅れて最後方から上がり33秒1(だったと思う)の脚で差しきるというとんでもない勝ち方だった。もう少し最近ではクリスタルカップで追込んだヒシアマゾンもまさに鬼脚という感じだった。でも何といってもあのラムタラの英ダービーでの追込みほど凄さを感じたものは最近ではない。まさに鬼気迫るとはあのことだ。鳥肌たったもんね。

追込む馬に浪漫を感じるというのは、ある種満たされない自分を投影しているのかもしれない。自分もいつか直線だけで逆転できるかもしれない、ということをこころのどこかで期待して夢見ている自分がいるのだ。一発逆転に期待するのはギャンブラーにとってはタブーなんだけどね、冷静な判断を妨げるから。

でもいつかは鬼脚を使いたいな、やっぱり。

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