my favorite things vol.14

「ミステリ・イン・U.K.」

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このコラムに何度も書いているが、去年仕事で初めてロンドンに行ったのだが、考えてみるとヨーロッパに行ったこと自体が初めてである。それまではもっぱらアメリカにしか行ったことがなかったので、一番歴史を感じたのがニューヨーク、という感じだったのだが、やはり本当に歴史の古い場所は違うなあという印象だった。

例えば仕事で使っていたスタジオが教会の中にあったのだが、訊いてみるとこの教会が建ってから7〜800年経つと言うのである。なんかちょっと大げさなような気がしないでもないが、古いことは間違い無い。実際、住宅街の町並みも全て歴史を感じるものばかりである。気のせいか人々もみんな呑気で余裕があるように見えるから不思議である。

で、話は突然変わるのだが、最近文庫になったので、ようやくミネット・ウォルターズの「氷の家」を読んだ。(それにしても最近のハードカバーはほんとに高い。)これが滅茶苦茶面白かったのである。

考えてみると、思春期のころまではわりとコナン・ドイルとか、クリスティとか、クロフツとか、イギリスの推理小説を読んでいたのだが、大人になってから(?)はハードボイルドとかサスペンスを好んだせいもあって、アメリカのミステリに偏っていた。まあ、推理小説というジャンル自体をポーというアメリカの作家が始めたわけで、量的にも圧倒的にアメリカのミステリーが多いのも確かなんだけど。個人的な印象としては、僕が好むストイックなものや、ヴァイオレンス溢れる非情なものはアメリカのミステリに多い印象である。

話をミネット・ウォルターズに戻すと、ちょっとしたカルチャーショックであった。錯綜したプロットを見事なドラマに仕立てる語り口。こけおどしは一つも無く、ロンドンを初めて訪れたときに感じた、歴史から来る(と思われる)余裕とか、のどかさを感じさせるのである。言ってみれば、なんか懐の深さみたいなものを感じるのである。それと、以前宮部みゆきのときも書いたのだが、やはり女性の作家というのはヒューマンな視点があって救いがある。しかし、これがデビュー作というのだから、これはもう本当に驚きである。

そう言えば、同じイギリスの作家のR・D・ウィングフィールドの「フロスト」シリーズの2作(「クリスマスのフロスト」と「フロスト日和」)も、独特の味があって無茶苦茶面白かった。早く次ぎの作品が読みたくて仕方が無い。

この最近読んだ二人の英国作家の作品を通して思ったのは、やっぱり人間余裕を持つことと、ユーモアを持つことはほんとに大事だな、ということ。そんなわけでちょっと英国ミステリにハマりそうな近頃です。

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