思う通りにいかない一日

4月8日、土曜日。

という感じで始まった一日だったが、今日は午後に今週最大のイベントと言っていいJリーグの鹿島対C大阪の試合があった。中盤四人を入れ替えた先発メンバーを見たときから嫌な感じはしていたのだが、案の定機能せず後半から中盤を入れ替えて終盤猛攻するも及ばず0-1で敗戦。で、夜は夜で負傷欠場していた大迫がベンチ入りしていたケルン対グラードバッハ、予想外に後半から大迫投入もいいところなく2-3で敗れる。というか、グラードバッハに圧倒的にポゼッションされて誰かにボールを預けてゲームを作るということがケルンはそもそも出来ていなかった。という具合にサッカー的にはいいところがなかった。おまけに夕食後に先日つけ直してもらったばかりの差し歯がまた取れた。

そんな感じでなんとなく思い通りに上手く行かない流れの一日。一番予想外だったのは母だった。6時半過ぎに行くと風邪四日目の母は今日も鼻声でいつの間にかパジャマに着替えていた(昨夜汗をかいて看護師が着替えさせたという話)。その母がどういうわけか僕が着くなり物凄い勢いで喋る。昨日も比較的よく喋った方だったが、今日は異常といっていいぐらいに饒舌だった。服の話をしていてカーディガンがないというのであることを示そうとチェストの引き出しを開けていると突然母がパジャマ姿でベッドから降り立って一人で立っていてまずびっくり。転んだら大変だから一人で立たないでくれとベッドに戻す。普段本を全然読まない母が今日はうちの先祖の資料文書(町が作った)を最初から最後まで全部読んだという。実際僕の名前が出てくるページの端を折っていた。そればかりではなく文庫本も途中まで読んだという。母はなんだかほとんどはしゃいでいるような調子で次から次へと話す。まさにハイになっていた。これがうつ病の人だったら明らかに躁転したと思うところだ。母が統合失調症を発症して以来のことを順を追って話すと、母は特養に移るまで全部覚えていないということだった。それはいいのだが、突然「それはオレ(山形の昔の女性の一人称はオレ)が学校を辞めてからの話だが?」と訊ねるのでびっくりした。母が教師を辞めたのはもう30年以上前のことである。いうなれば母の記憶は中間がすっぽり抜け落ちて、奇妙な具合に繋がっているかもしくは繋がってすらいないのかもしれない。とにかく今日の母は喋り詰めであっという間に一時間経った。人によったらもしかしたら認知症で呆けたのかもと思うところだが、前述の学校を辞めた云々の問い以外の話はすべて筋道が通っていておかしなところはなかった。さしずめ今日の母は急にアドレナリンが全開になったようだった。

母の部屋を後にしてエレベーターで階下に降りて玄関へと向かいながら、母が突然元気過ぎるくらいに元気になったことで逆に不安を覚えた。ろうそくが消える寸前に火の勢いが増すということが頭に浮かんだ。それぐらい今日の母は一日で劇的に豹変していた。もちろん統合失調症を発症したときのように、まったく別の人格(悪い人格)になってしまったというわけではないのだが、どうも素直にいい方に考えられない。ある意味状態が急変したという感じがして。

帰宅後も不安感はなかなか拭えず誰かに話したくてしょうがなくなり、弟に電話して話した。弟は僕の不安を分かると言った。いずれにせよ、明日以降の母が今日と同じように元気といいうかハイなままなのか、それとも元の口数の少ない母に戻るのか、想像していても分からない。こればっかりは明日以降にならないと分からない。考えてみれば今日の母は病気や手術をする前の元気なころの嬉しくてはしゃいでいるときの母であり、逆に今までの母が母にしてはあまりにも口数が少なく寡黙だったといえなくもない。つまり、いい方に解釈すれば(急に)元の母に戻ったのかもしれない。

そんなわけで今日は何かと想定外で、思う通りに行かなかった一日だった。

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