初めての雪下ろし、犯罪

1月10日、土曜日。

足に来ている。たぶん明日の朝起きると、足だけではなく全身筋肉痛だと思う。というのも、田舎の実家に戻って初めて(もしかしたら生まれて初めてかもしれない)雪下ろしをしたからである。

今日は青空が覗いて晴れてるなと思うと吹雪いたり、猫の目のように天気が変わった。日中は例によって台所で本を読んでいた。午後になって、ふと窓の外を見るとこの数か月留守であると思われる、普段は老婆が一人暮らししている裏のプレハブの平屋の屋根に親族かボランティアと思われる男性が上って雪下ろしをしていた。このプレハブの家は屋根から落ちた雪で玄関がほとんど雪で埋まっている。確か母と同い年だったと思う老婆は猫と暮らしていたのだが最近はまったく姿を見せず夜も電気が点いていないので、どこかの施設にでも入ったのだろうと思っていた。最近はすっかり空家の体を成していた。そこですら雪下ろしをやっているということにいささかショックを受けた。ということは、この界隈で雪下ろしをしていないのはうちぐらいなのではないだろうかという疑念が湧いた。さすがにやらないとまずいのではと思う。

そんなわけで外に出て梯子を探したが見つからず、梯子ぐらいある大きな脚立があったのでそれを運んで一番雪が積もっていると思われるガレージの屋根に立てかけて上ってみた。すると、雪が大変なことになっている。母屋はともかく、さほど頑丈な造りとも思えないガレージをこのまま放置しておくともしかして雪で潰れたりはしないだろうかと心配になり、とうとう雪下ろしをする決心をした。

最近窓から目撃したところを見ると、隣家とか近所ではスノーダンプとかジョンバといった効率のいいもので雪下ろしをしているようだが、うちにはそんなものはなくプラスティック製のシャベルしかない。なのでそれを持って恐る恐る屋根に上がり、雪下ろしを始めた。雪は60cm以上、もしかしたら70cmぐらい積もっていてしかも湿っていて重い。なので、想像以上に重労働だった。自分では一生懸命やっているつもりなのだが何しろ雪が多くてなかなか捗らない。最近の極度の体力のなさ故に始めてすぐにへばりかける。そこをぐっとこらえてしばらくせっせと雪下ろし(というよりもむしろ、屋根の上で雪かきをしているようなものだった)をしたものの、4分の1ほどで燃料切れでギブアップ。高所恐怖症の僕ではあるが、屋根の上での作業よりもむしろ梯子代わりの脚立を降りるときが一番怖かった。

たかだか車庫の4分の1しか雪下ろし出来なかったのだが、前後に煙草を吸った時間から察するに小一時間は作業していたようだ。それにとにかく雪が重かった。こんな重労働というか運動をしたのは近年記憶にない。そんなわけだからとにかくへばった。足ががくがくになった。もしも僕が昔の強制労働を強いられる囚人や奴隷だったとしたら、真っ先に倒れて過労死していることだろう。そんなわけなので本日は疲労困憊。

晴れ間を見て雪下ろしをしたのだが、終わって台所で煙草を一服していると外はまた吹雪いていた。どうやらタイミングとしてはよかったっぽい。

そろそろ夕飯を作ろうかと思っていると6時過ぎに携帯が鳴った。見ると、見知らぬ番号だ。出てみると、女性の声でネットで見たのですがという。何かと思ったら、例の通信作詞講座を地域別の音楽教室サイトに登録しておいたのを見たらしく、息子さんにギターを教えて欲しいとのことだった。話を聞いてみると隣町の人だった。もちろん教えるのはやぶさかではないのだが、問題はこの息子さんというのが譜面をまったく読めないのはもとより、軽度の知的障害があるということだった。なので、教えるとしたら本当に基礎の基礎、ゼロからということになるだろう。これはいささか大変かも知れないなと頭の片隅をよぎったけれど、とにかく来週の土曜日に一度来てもらうことにした。お母さんが車で連れてくるということだった。いろいろと頭でカリキュラムをシミュレーションしてみるものの、理解度をどんどん下げていくと切りがなく、これは案外難しいかもしれないなと思う。ともあれ、一度話をしてみることだ。いずれにしても、これは僕にギターの練習をしろということであり、書斎を片づけろということなのかなと。

夕食後はBSで高梨沙羅が優勝したジャンプのW杯を見た。好調時の高梨は一人だけ次元の違う強さだった。

というわけでフォン・シーラッハ「犯罪」読了。ツイートを引用すると、

ということに尽きるのだが、極限まで無駄を削ぎ落とした語り口なので一編一編が短く、とても読みやすかった。人は何故犯罪を犯すのか、という根源的な問いの背景にそうした人間そのもの、そういった人たちの人生そのものが感傷的ではない文体によって(しかしなんらかの愛情すら持って)描かれていて感銘を受ける。いわゆるエンターテインメントとしての通り一遍のミステリーでもなく、深刻で陰鬱な純文学でもない。かといってただのドキュメンタリーというわけでもない。作者が有能な刑事弁護士であることから、すべて実話に基づいていることにも説得力があるし、ミニマリズムに徹した音楽を聴いているような斬新でとても新鮮な短編集だった。乾いた筆致がとにかく印象的。あらゆる人に薦めたい。ツイートにもあるように次作の短編集「罪悪」も早速アマゾンに注文した。


犯罪

今日で母のところに行かないのはもう4日目、何かがぽっかりと抜け落ちている感じが抜けず、いまだに慣れない。昨日弟から電話があって、特養で流行っているのは風邪ではなくインフルエンザらしい。いずれにしても早くまた面会出来るようになってもらわないと、どうにも気分的に落ち着かない。

それにしても今日は疲れた。明日も雪下ろしの続きをやるつもりではある。いい運動になるし。

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