母の誕生日、映画オタクの血が騒ぐ

今日は母の誕生日、昼前に弟と二人で昨日老人ホームに入ったばかりの母のところへ。すると、「おっかない」と言ってしきりに怯えた様子。話を聞くと「男の人が入って来る」と言う。施設の人に話を聞いたところ、どうやら食堂で朝食後のコーヒーを飲んでいるときに、土日ショートステイの老人男性が何やら腹を立てて大声を上げたせいらしい。それが原因でどうも母の被害妄想が全開になってしまったようだ。なんとかなだめるとそれ以上妄想がエスカレートすることはなく、無事昼食のテーブルに就いたところを見届けて出る。

弟と一緒に蕎麦屋で昼食、弟はそのまま仙台に帰っていった。

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地元唯一の名物と言っていい冷たい肉そば。

弟が帰ると何をするにも中途半端な時間、なのでなんとなく数年前に途中まで見てそのままになっていたクリストファー・ノーラン監督「インセプション」(2010)のDVDを見た。映画1本フルで見るのは久しぶり。クリストファー・ノーランらしい凝った脚本だが、それよりもやはり映像に目を奪われる。近年の特殊効果というかCGって凄いなあと。

これでかつてアメリカで黒澤明のLD買い漁っていた映画オタクの血が騒ぎ、もっと見たくなる。それで同じクリストファー・ノーラン監督で未見だった「インソムニア」(2002)を立て続けに見る。ノルウェー映画のリメイクだがやり切れない話。というか、やはり脚本はノーランが書いた方が面白い。屈折度が足りない感じはする。クリストファー・ノーランはやっぱり時間軸を逆行する「メメント」(2000)の衝撃度が一番高かった。アル・パチーノちっちゃいなあと思ってウィキペディアで調べてみると167cm、ちなみにトム・クルーズは170cm。

ここまで来るとなんか止まらなくなり、もっと見たくなってしまった。もう1本洋画を見たいところだが手元にある残りのDVDはすべて邦画、未見の「必死剣鳥刺し」を見るという手もあったが結局2本しか撮っていない長谷川和彦の第1回監督作品「青春の殺人者」(1976)を久しぶりに再見した。母親の誕生日に親殺しの映画を見るのはなんだなあと思いながらも、やはりこのころのATG(アート・シアター・ギルド)映画はある種異様な熱気を孕んでいていい。それはいわゆる昭和っぽさというよりも、全共闘世代の熱気のように思える。今の「相棒」で紅茶を気取って飲む水谷豊はまったくピンと来ないが、若いころはいい役者だった。ウィキペディアによると水谷豊は168cmだが、かつて女優のようなことをやっていた元妻がドラマかなんかで共演したときの話によるともっとずっとちっちゃいということで、実際は水谷もアル・パチーノもトム・クルーズももう少し小さいのだろう。

長谷川和彦が何故2作だけでその後撮らなくなったのか、いまだに謎だが、「青春の殺人者」にしろ「太陽を盗んだ男」にしろ、どこか自主制作映画っぽさ(いい意味で)を感じる。たぶんそれは温度・熱のようなものだろう。一方のクリストファー・ノーランだが、同世代のポール・トーマス・アンダーソンと比べると、個人的にはPTAの方が天才だという気がする。で、このPTAの事実上の奥さん(マーヤ・ルドルフ)が父親がリチャード・ルドルフで母親がミニー・リパートンというのもなんか凄い。PTAの「パンチドランク・ラブ」は小品だが、ワンカットだけ見てもこの人天才だなあと思った。傑作「マグノリア」は言うに及ばず。

そんなわけで自分でもびっくりだが突然一日で3本も映画を見てしまった。一体何がどうしたというのだろう。

で、中上健次原作の陰鬱な話、「青春の殺人者」を見ている間にブンデスリーガの最終節で岡崎が今季15ゴール目を決め、故障していたニュルンベルクの長谷部が試合に復帰していた。そんなわけで母は怯えていたし寒くてずっと暖房つけていたし、退屈な一日になるだろうなと思っていたのだが、終わってみるとなにやら妙な熱気を帯びた一日となった。


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