横山秀夫「クライマーズ・ハイ」

横山秀夫「クライマーズ・ハイ」読了。うーん、途中そこそこ面白かったのだが、結末に近づくに連れ納得がいかないという。この人読むの確か二度目、前回は短編集だったと思うのだが、基本的に話がお涙頂戴の浪花節、文章にもストーリーにもイマジネーションの飛躍とか意外性といったものがない。簡単に言えば紋切型。人物造形もそう。登場人物に魅力がない。ひたすらいらいらするだけの悪役にまず魅力がないし、いい人でかつ魅力的な人物というものをこの人は造形出来ない。主人公にしろ、誰にしろ、すぐにキレて罵詈雑言を吐きまくるという会話もあまりに安易。全員キレてどうする。これでは皆同じような人間に思える。以前もちょっと書いたように、怒りだけを覚えて読み進み、ときどきいかにも泣いてくださいというものを挟むという、安直なテレビドラマのような筋書はいつも一緒で新鮮味もないし予定調和。面白いと思えるのは怒りを覚えながら読んでいる間だけで、(待ってましたとばかり)いざお涙頂戴の場面に来ると逆にシラける。「どら焼顔」とか「泥棒髭」とか、僕とそれほど年齢が変わらないのにセンス古過ぎ。ユーモアのセンスゼロ。簡単に言ってしまえば、センスが悪い、紋切型、想像力不足、すべてにおいて古臭いし臭い。こういうのを文章力があるとは呼べないと思う。少なくとも小説という物語を語るものにおいては。「64」とか評判いいけど、ちょっともう読む気しないな。先が読めるからカタルシスない。

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