逃避行

10月27日、火曜日。

今避けたいのはセンチメンタリズムに埋没すること。それは致命的な失敗に繋がるから。つまりストイシズムに徹するということなのだがそれがなかなかできない。結局のところ、人間というものは感情で右往左往してしまう。

昨日の日記にも書いたように、ブロックした彼女のショートメールはずっと見ないようにしていた。見ると心がブレるから。そもそも彼女には中庸というものがないから、内容がどちらかに極端に振れていることは火を見るよりも明らかだ。とはいうものの、メールの内容を見てみたいという欲求は常にある。それが好奇心なのか感情なのかはよく分からないが。今日はただの一通もSMSは来なかったのだがそれでかえって心がブレてしまい、午後3時ごろになってメールを見てみたい衝動に駆られてどうしたらいいか分からなくなった。それで、おもむろに車ではやぶさという最上川の急流の名所にある蕎麦屋の駐車場に行った。

階段に腰掛けて煙草を吸った。ここでメールを見てしまおうと思っていた。そのとき、一台の車が駐車場に入ってきた。それだけでも驚いたのだが老人二人が運転するその車は停まるといきなりクラクションを鳴らした。これに酷くびっくりして、簡単に言えば気が動転してしまった。そそくさと車に戻って帰路に就き、帰りがけにスーパーに寄って買い物をして帰った。つまり、この段階ではまだメールの内容を見ていなかった。まだ耐えていた。行動はいささかセンチメンタルであったけれども。

ところが夕食後ソファに座ってスマホの設定をいじっていると、意図せずにブロックしたメールの一覧が表示されてしまった。で、とうとうメールを(それぞれ冒頭部分だけだが)見てしまったのだった。中身は案の定だった。最近のメールほど懇願になってはいるのだが、その合間に180度内容が違うメールが混じっている。これだけでも彼女のメンタルがいかに不安定で極端に振れるのかが分かる。

一度見てしまうと、今度はその見てしまったということを自分の中でどう収拾をつけていいのか分からなくなり、またしても車で出かけた。まずまたスーパーに行って缶コーヒーを1本買い、踵を返してコンビニに寄って煙草を2箱買い、その足で町の中央公園に行った。気持ち的には一人になりたかったのだが、考えてみると自宅にいるのが一番一人になれるのだからそもそも行動自体が矛盾している。中央公園の駐車場に車を停めて煙草を吸ったが、公園ではスケートボードの練習をしている若者が2・3人いて、それが気になって落ち着かない。しょうがないので今度は町役場に向かった。さしたる意味もなく役場の駐車場に車を停めた。役場はまだうっすらと電気が点いているところがあり、まだ残業している人がいるようだった。

車を降りて、何をしたらいいのか分からないので役場に隣接している動物園に足を踏み入れた。すると、ちょうどそこに役場の駐車場に停めていた車を出そうとするおっさんが現れ、それでなくても真っ暗な役場の裏手で閉まっている動物園にいる自分はいかにも不審人物でしかなかった。おっさんの車が発車して、動物園の奥を覗いてみたが真っ暗でちょっと怖くなり、結局車に戻って帰宅した。結句、この一連の車での往復行動に一体何の意味があったのか、自分でもさっぱり分からなかった。強いて言えば自分の感情から逃げたかったのだと思う。

余計なことを考えそうだったので夜はちょこっとトレードをした。その間だけはトレード以外のことを考えずに済む。煙草の本数だけが増える。油断するといたたまれない気持ちになる。なんだかすべてのことがなんらかのモラトリアムに過ぎないような気がする。

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