ペペロンチーノ

2月26日、水曜日。

本来なら今日の日記は書かない予定だった。というのも、今日は彼女のところに泊まる予定だったのである。それがどうしてこうやって日記を書く羽目になったのかは推して知るべし。

とにかく今日の彼女は機嫌が悪かった。それ以前に、前回の経験からどうも自分が彼女のところに行くとろくなことがないという感じはしていたのだが。午後、彼女と二人で彼女の家から車で15分ぐらい行ったところにある隠れ家的なカフェに行った。こぢんまりとしたその店はお洒落でございます、と全力で自己アピールしていた。そういう自意識過剰的な側面はSNSでも分かるように往々にしてあまりよい結果をもたらさない。席についてメニューを開いてまず驚いたのは値段の高さだった。珈琲が800円台、ケーキも500円以上する。で、二人分の珈琲とケーキを頼むと、大いにカッコつけて出てきたケーキはお茶菓子並みに小さかった。これで500円かよ、と内心唖然とする。

どうにも不思議なのは、その対価の馬鹿高さに彼女が会計するまで気づかなかったことである。私が出す、と言って彼女が払ったのだが、店を出るなり「ノーパン喫茶かよ!」と値段の高さに憤慨し、恐らくそこから彼女の不機嫌が始まった。

いずれにせよ今日の彼女はそもそもいらいらしていたように思える。帰り道に工事渋滞に巻き込まれると貧乏揺すりをして「クソ」を連発する。ようやっと彼女のところに戻ると今度はWiFiが異様に遅い。それでまた彼女はいらいらを募らせる。問い合わせると、どうやら速度制限がかかっているようだった。話を聞くと昨夜タブレットでAbemaTVをつけっ放しにして寝たというのだから自業自得の話だ。テレビで僕が国会中継を見ているとそれにもまた彼女はいらいらする。夕飯は彼女がスパゲッティを作るというので、スパゲッティは時間通りに茹でること、茹で上がったらオリーブオイルを絡めるようになどとコツを教えたのだが、作りながら彼女は例によってキレた。

それでてっきり夕飯を彼女が作るのはなしになったのかと思ったら、キレながら彼女はペペロンチーノを作った。作ったというか、茹でたスパゲッティに絡めるだけの奴だが。その前に例の如く「もういい!」を連発し「もう別れる」まで2回ぐらい連発していたので、僕はもう帰ると告げていた。しかしながら出来上がったペペロンチーノを二人で食べた。食後のお茶を飲んで、とにかくこの雰囲気を、なんて言ったかな、要するにいい方にひっくり返すのは無理というようなことを言って僕はそそくさと帰った。

帰り道、仙台宮城までの高速がやけに長く感じた。作並温泉までもやけに遠く感じた。どうして彼女はこういう人間なんだろうと考えた。それから僕はようやく気づいた。ペペロンチーノが美味しかったということに。そのことを彼女に言うべきか、この時間に至るまで延々と悩んでいる。

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