翌日

3月20日、水曜日。

9時53分、病院からの電話で起こされる。母は今日の午前中にICU(集中治療室)から一般病棟に移されるということだった。起きて台所に行くと、弟が家中を掃除していた。特に風呂場は熱心で、浴室の椅子は捨てて新しいものを買ってきた方がいいとごみ袋に入れていた。弟の掃除に対する入れ込みようはさながら潔癖症のそれで、僕がA型で弟はB型なのだがなんでこうなるのだろうと思った。そういえば父がB型なのに物凄く几帳面だったので、弟は父に似たのだろうか。とすると、僕は母に似たことになる。

特養の相談員が心配して電話をくれたので、手術が無事に終わったことを報告。同じく叔母(母の妹)と叔父(母の弟)にも報告する。

1時過ぎに弟と二人で病院に向かう。今日はとにかく暑かった。外の気温は18度だったが体感温度は20度を超えていた。母は前回と同じ部屋の同じベッドにいた。まだ鼻には酸素吸入のパイプが繋がり、心電図などのバイタルも繋がっていて、ICUからベッドごとそのまま病室に移ったようだ。今日の母は元気だった。最近にしてはよく喋ったし、ときおり笑顔も見せた。母が元気なのには本当に安心して、病院からの帰り道、これ以上何も望むまいと思った。

夜は公民館で町内会の総会に向けての打ち合わせ。4月から区長が変わることになった。今年会計をやっていた、一番発音が訛っていて聞き取りにくい人だ。今日話していて驚いたのは、うちの近所の空き家だと思っていた家に実は人が住んでいるという話。2階建ての家だが電気が点いているのを一度も見たことがないし一階の駐車場には青いビニールシートが被せてある。そういえば夜にそのビニールシートをめくって車を停めているのを見たことがあるが、あれは誰かが空き家に勝手に車を停めているものとばかり思っていた。実家に戻ってもう6年目になるが、その間その家は人が住んでいる気配はまったくなかった。その家の隣の人の話によると、どうやら電気も通じておらずトイレが水洗になっていない可能性もあるという。住人は町内会に入るのを拒否して、人が訪ねてきても出ないのだという。本当にびっくり。まるで怪談だ。うちから目と鼻の先にそんなところがあるとは。一体全体、どういう生活をしているのだろうか。

弟は今日もうちに泊まったけれど夕飯も一人で外食に出かけるしうちにいる間は茶の間に一人で篭ってずっとテレビを見ていてほとんど会話を交わさず。なんだかいつの間にか妙な距離感になったなあと思う。歳が近い分、距離感ができてしまったような気がする。それとも兄弟というのはこういうものなのだろうか。前述の掃除のこともそうだが、どこか僕と価値観が違っており、弟は弟で独自の見解を述べたがるので話をしてもどうにも噛み合わないところがあって、結局なんだかちょっと気まずくなってしまう。もちろん僕よりも弟の方が遥かに常識人なのは確かだ。かといって僕がはなはだしく非常識であるという理屈にはならないと思うのだが……。

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